その人がその人らしく輝くために ── Webコンサルタント×フリーランス 酒井公太さん
ヒューマンインタビュー第12回は、Webコンサルタント×フリーランスの酒井公太さん。
酒井公太(さかい こうた)
「自分が面白いと思うものを人に伝えるのが好き。」という理由で、大学では学芸員の資格を取得。
その後、一度は一般企業に就職するものの「モノをみせる」という仕事を諦めきれず、東金技術専門校にてディスプレイブースの製作などを勉強。その授業中にウェブの可能性にふれ、都内のデザイン会社にてウェブデザイナーとして経験を積む。
その後、フリーになり様々な企業案件のかたわら、街おこし系のイベントのプロデュースにも従事。
また、つくば市をアートで盛り上げる、合同会社ネオつくばプロジェクトの業務執行社員も務める。
デザイナー、Webマーケター、企業コンサルタントなど、これまでに様々な仕事を手掛けてきた、職人気質のプロフェッショナルな仕事人である酒井公太さん。その精神的基盤を支えているのは、「空気清浄機のように、人の心を爽やかにする存在であり続けよう」というご自身への誓いです。
筆者はライターとしての仕事を再開した折に酒井さんと出会い、仕事に対する姿勢をその背中から学んできました。
酒井さんはこれまでの経験と知識を統合し、企業・個人のブランド育成に携わる「ブランドコンサルタント」としての活動も始められました。「それぞれの人が、適性に合った仕事をするためのサポートをしていきたい」と願う、熱い想いをお伺いしました。
なんで、みんなイシュー(最終目的)を深堀りしないんだろう
「デザイン、Webマーケット、コンサルタンティング……いろいろやっていますが、いま請け負っている主な仕事は、企業コンサルタンティング。サイト構築を通じて、その企業のブランドをつくっていく仕事です。企業対象のブランドコンサルティングですね。
ただ、自分が本当にやりたいことは、もしかしたらその枠には収まらないのかもしれないとも感じています。企業のコンサルティングでは、売上を増加させるという明確な目標がありますが、社員さんひとりひとりにヒアリングしてみると、『この社員さんと、会社の総意は違うところにあるかもしれないな』と感じることもあったりするんです。そうした場合、自分がどういう行動を選ぶのがその状況にとって最善なのだろうか。企業コンサルの立場としては『会社の売上』という文字がチラつきますが、目の前の社員さんの本質的な幸せがそこと合致するのか…──ということはよく考えます」
好奇心旺盛な輝く瞳で、表情豊かにお話くださる酒井さん。その瞳の奥底には、関わる周囲の人々への豊かな愛情と深い知性があふれています。
「僕が好きな本は、『イシューからはじめよ』。この本で主に書かれているのが〈最初に自分が達成したいゴールを決めること〉なんです。
目指すべきゴールは、人それぞれ。たとえば、歌手の方だったら『何をしたくて歌手になったの?』って問われた時に、『歌が好きだから』という人もいれば、『人に感動してほしいから』って人もいますよね。でも、どちらの歌が心に届くかっていうと、自分自身のゴール、目的を深堀りしている人の方が、聴き手側である僕たちが得られる感動も大きいんじゃないかって、思うんです。
だから、自分自身の最終目的を深堀りしていくことって、人生では欠かせない大きなことだと考えているんです。自分自身の最終目的が明確になることによって、自分の取るべき行動も明らかになって、自分の人生も創造されていく。なんでみんな最終目的を深堀りしないんだろう、って思いますね。課題や問題点があるからこそ、自分のゴールが明確になっていくと思うんです」
暗い目に、光が戻った瞬間
酒井さんがこのように、自分自身との対話を深めていく背景には、職業訓練校で教鞭を取った過去も、大いに関係がありました。
「職業訓練校、僕自身も通ったことがあるんです。実はその後、ひょんなことから職業訓練校のウェブデザイン講座の先生も経験することになったんです。生徒の方々を教えて、励ましていくことはとても好きでしたし、僕自身の学びにもなりました。
失業を経験している生徒がほとんどの職業訓練校。最初はなかなかみんな社会に対しての希望が持てないから、とても暗い目をしているんです。なかなか結果が出ないってこともあるから、そうすると段々と当初の〈就職〉という目的を見失ってしまう人もいたんです。そういった生徒たちを、ちょっとずつでも向上していこう、って励まし続けました。
そうすると、徐々に暗い目に光が戻るんですよ。その瞬間が、もう本当に嬉しかったです。
ですが、人って、適性のないものをいくらやっても、うまくいかないんですよ。だから、自分の適性はどこにあるんだろう、ってことを探し続けることが大事です。職業訓練校でも、適性のある生徒は、就職出来ました!とか、起業しました!って、わかりやすい成果がでていたんですよ。
逆に、適性がない生徒は、成果を上げている生徒と比較しちゃうんです。そうすると、『自分はなんでできないんだ...…』って、また暗い目になっちゃう。そうじゃない、まずは自分の課題を深堀りすることが大事なんだよ、そして自分に出来ることを重ねていくことが大事なんだよって、今なら言えるんですけどね...…。その時は僕も若くて、ただただ頑張れとしか言えなかったんです」
「人が絶望した時にみせる〈暗い目〉に敏感になったのは、自分が企業で働いていた時の経験が大きいのかもしれません。
新卒で入った会社では、研修で行った海外企業の視察などは面白かったものの、その先のビジョンを描くことが出来ずにいました。そんな悩みを同期に相談したら、『親父が言ってたけど、仕事ってのは40年間同じことを我慢して続けることなんだよ』って薄ら笑いで返されたんです。ゾッとしました。そいつもやっぱり、暗い目をしていました。
その後転職して、通信系の会社に務めることになりました。そこでのキャンペーンの手伝いなどもしたのですが、そのキャンペーン内容というのが、どう考えてもお客様にとって不利になる内容ばかり。これはひどい、クレームが来たらどうするんですかと、当時の上司に言ったところ、『だからバレないようにやるんだよ』という答えが返ってきたんです。愕然としました。
そんな仕事なんかやりたくないって気持ちがずっと渦巻いていたから、当時の僕も暗い目だったと思います。僕だけでなく、コールセンターで働く女の子たちも、そして上司も暗い目をしていました。本当につらかったです。自分が納得できない、適性に合ってない仕事をやるっていうのは、こんなにもつらいことなんだ、って思いました。適性に合ってないことをやるから、暗い目になってしまうんです。
だから、それを断ち切って、自分の仕事の責任を自分で取れるフリーランスという働き方を選びました。もう、暗い目に戻るのはいやだったんです」
酒井さんは朗らかに笑いました。
この人のためにがんばりたいから
取材中のひとコマ。メディア運営のサポートも大事なお仕事です。
「僕、フリーランスになるにあたってマイルールを決めたんです。それは『この人のために頑張りたい』って思えるようなクライアントさんと組んで、仕事をやっていこうってこと。この人のために頑張りたいって気持ちがあると、その仕事に一生懸命取り組むことが出来るんです。フリーランスで仕事を続けていくにあたって、それが一番大事なポイントですね。
幸いなことに、会社員時代からのお取引様が、そのまま『あなたと一緒に仕事をしたい』とおっしゃってくださって、今の仕事を始められました。そしてその方が、また次の新しい方をご紹介くださって……という具合に、いい人たちの連鎖が繋がっていくんです。これは本当に、ありがたいことですね。
だから、僕はもう好きな人としか仕事をしないって、決めてしまったんです。そうすると、その人たちのために100%売上を作っていく、利益を出していくっていうことに集中できるようになったんですよね。すごく、自分にとっても幸せな選択でした。
それはつまり、自分の適性に合ったことをするってことなんです。個人レベルでのやりたいことに正直になっていくこと、それが天職を見つけられるすべての鍵だと考えています。
こういう想いの原点になっているのが、職業訓練校での経験かもしれません。結果を出すことが出来たら、みんなでハイタッチして喜び合って。そして、『おまえ、本当によくやったな!』って涙を流せるような感動を味わったことが、やっぱり僕にとっての原点なんだなって考えています」
自分らしく輝くために
最近はご友人の相談に乗ったことが、ご自身にとって考え方を新しいところから見つめる経験になったと話してくださいました。
「僕は、保育園のパパ友がダンサーをやっていることもあって、ジャズダンスの教室に通っているんです。そこで一緒に踊っているダンス友達の就職の相談に乗ったことがあって。友達は『何をしていいのかわからない』と暗い目でいるんです。ただ一方で、ダンス教室のみんなで宝塚を見に行った時のその子を思い出すと、すごくいい笑顔で舞台を見つめていたんですよ。そういうところにやりたいことの種が埋まっているのかな、って思うんです。
本当につらい時ってきっと、自分が何に対してこんなにつらい思いをしているのか、うまく言葉に出来ないかもしれない。そんな時には、ただ寄り添うというのが最善の選択なのかもしれません。またたとえば『つらいことを一旦横に置いて、どんなことが楽しいか、一緒に考えてみようよ』といってみることで、自分にとって何がハッピーになれることかを思い出せるって種になるかもしれません。
まずは、話を聴く。不安に寄り添って、それを解消していくお手伝いをする。そして、本当にその人がやりたいことに向かっていけるまでサポートする。どんな時も、その人がその人らしく輝ける生き方のサポートをしていきたいな、って心から思っています」
酒井さんは少年のように瞳を輝かせ、笑顔になりました。
酒井さんの日々の発信は、ブログやTwitterでもご覧になっていただけます。
酒井さんのTwitterの投稿で印象的なのが、奥様とお嬢様への愛情に溢れた投稿。特に、保育園に通うお嬢様の可愛らしい言葉を綴った投稿には、思わず微笑みが浮かびます。最後にお嬢様のことをお伺いしました。
「ウチの娘は、『本能で楽しむ』天才なんです。テレビから音楽が流れてきたら、タンバリンを持ってきて踊る。食事の時も、ご飯をモリモリ美味しそうに食べる。
自転車の後ろに乗せた時も、毎回『ぼうけんにしゅっぱーつ!レッツゴー!』と叫ぶ。保育園も本当に楽しいみたいで、今まで一度も『行かないで〜』と引き止められたことがありません。
僕にとって娘は、〈楽しむ〉の師匠ともいえますね。僕も、毎日をいつ死んでもいいくらい、楽しく生き生きと働いていこうと決めています。いつか、この世を離れるときが来ても、『ああ、楽しかったーーー!!!』って言って去りたいんです。そんな背中を、いつも娘に見せながら生きていきたいですね」
「ぼうけんにしゅっぱーつ!レッツゴー!」という可愛らしい掛け声を聞きながら、酒井さんはこれからも新たな冒険へ向かっていきます。その道程では、たくさんの方々の心に光を灯していくことでしょう。その未来が、眩しく見えたような心持ちになりました。
酒井さんのますますのご活躍を、心から願っております!
0コメント